Black Market
Weather Report (1976)
- Black Market
- Cannon Ball
- Gibraltar
- Elegant Pepole
- Three Clowns
- Barbary Coast
- Herandnu
ウェザー・リポート通算5作目にあたる1976年作品。前作までレギュラー・べーシストだったアルフォンソ・ジョンソンが製作途中で脱退。ジョー・ザヴィヌルはこのタイミングで手渡されたデモテープを聴いて、その独特のベーストーンに一目を置いていたジャコを呼び寄せる。ザヴィヌル作の《キャノンボール》とジャコの曲《バーバリー・コースト》でジャコにベースを弾かせた。参加メンバーはザヴィヌル(key)、ショーター(sax)の他、アルフォンソ・ジョンソン(b)、ナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)、チェスター・トンプソン(ds)、アレックス・アクーニャ(per)、ドン・アライアス(per)他が参加。ジャコを向かえファンク・サウンドをよりポップな指向へ変化させた第三期ウェザーリポートの始まりがこのアルバムである。70年代を代表するジャコとは一味も二味も違うベースの巨匠、アルフォンソ・ジョンソンの仕事にも注目したい
Heavy Weather
Weather Report (1977)
- Birdland
- A Remark You Made
- Teen Town
- Harlequin
- Rumba Mama
- Palladium
- The Juggler
- Havona
ジャコは本作で正式メンバーとなったが、既にコ・プロデューサーとしてクレジットされており、その存在感を決定付けたアルバムとなった。オープニングでハーモニクスを効果的に使った#1《Birdland》、ザヴィヌルがジャコのために作ったといわれる#2《A Remark You Made》、ジャコのオリジナルで後にトレードマーク的な存在となった#3《Teen Town》と超絶的なベーステクニックを披露した《Havona》など話題に事欠かない。結果的にビルボードのジャズチャートで1位に輝く名盤だが、現在もベストセラーを続けている。ライブ音源のマノーロ・パドレーナのパーカッションによる#5《Rumba Mama》も、アルバムのいいアクセントになっている。ウェザー・リポートの入門アルバムとしても最適。
Mr. Gone
Weather Report (1978)
- The Pursuit Of The Woman With The Feathered Hat
- River People
- Young And Fine
- The Elders
- Mr. Gone
- Punk Jazz
- Pinocchio
- And Then
エスニカルなイントロが印象的な#1《The Pursuit Ofthe Woman With The Feathered Hat》、エフェクトをかけたベースラインとお得意のリズムパターンでウェザー・リポートの代表曲となった#2《River People》、ショーターを中心にして個人的に大好きな#3《Young And Fine》、現代音楽から不思議な4ビートに転ずる#5《Mr. Gone》、ジャコは自らを“ジャズ界のパンク野郎”と称していたがその意味を曲に託しイントロで高速ベースソロが炸裂する#6《Punk Jazz》など、私の中では好位置につける作品だが、歴代のアルバムの中では過小評価されている感が否めない。
本作からウェザー・リポートに加わったピーター・アースキンのほか、トニー・ウィリアムス、スティーブ・ガッドも参加。エンディングの《And Then》ではアース・ウィンド・アンド・ファイアーのモーリス・ホワイトにも協力を得るなど、多彩な曲が詰め込まれた秀作だと思う。今振り返るとジャズ界がメインストリームに回帰する兆候を示し始めたこの時期に実に示唆に富んでいる。今一度再評価されるべきアルバムではないだろうか?
8:30
Weather Report (1979)
Disc-1
- Black Market
- Teen Town
- A Remark You Made
- Slang
- In A Silent Way
- Birdland
- Thanks For The Memory
- Badia/Boogie Woogie Waltz Medley
- 8:30
- Brown Street
- The Orphan
- Sightseeing
1978年に行われた全米ツアーからのライブ音源と、4曲のスタジオ録音からなるウェザー・リポートの代表作。《バードランド》《ティーンタウン》もライブならではのエキサイティングな演奏で完成度も高い。ジャコ&アースキンの鉄壁のリズムを従えたウェザー・リポートはこのとき絶頂期を迎えていたことをこのアルバムで証明した。そしてジャコ自身もこのアルバムに後に語り草となる名演《Slang》を残した。ディレイ・マシーンでワンフレーズをループさせてリズムトラックとして代用し《サード・ストーン・フロム・ザ・サン》を弾きまくる。この曲のエンディングはその後の彼を暗示しているようにも聞こえる。ライブで圧倒的なパフォーマンスを誇ったこのグループの歴史的な名盤であるとともに、80年代にジャズ界全体がメインストリームジャズに回帰する前兆がここでも垣間見える。
Night Passage
Weather Report (1980)
- Night Passage
- Dream Clock
- Port Of Entry
- Forlorn
- Rockin' In Rhythm
- Fast City
- Three Views Of ASecret
- Madagascar
『8:30』で70年代の活動を総括したウェザー・リポートは、80年代最初のこのアルバムで、デューク・エリントンの《ロッキン・イン・リズム》を取り上げるなど、真っ向「ジャズ」に挑んで話題を集めた。アプローチこそザヴィヌル的ではあるが、80年代に台頭するメインストリーム(4ビート回帰)を意識したのか。スイングするウェザー・リポートが楽しめる。ジャコにスポットを当てると《Port Of Entry》の超絶・超高速ベース、そして『ワード・オブ・マウス』でセルフカバーしたジャコの代表曲《スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット》の初演がこのアルバムであることも見逃せない。この後、ウェザー・リポートは、ザヴィヌル主導のアルバム制作となってゆく。
Weather Report
Weather Report (1981)
- Volcano For Hire
- Current Affairs
- N.Y.C.
- Dara Factor One
- When It Was Now
- Speechress
- Dara Factor Two
ジャコ&アースキンが在籍したウェザー・リポート黄金期の最後の作品。ジャコに限っていえば3つのパートで構成され10分を越える組曲《N.Y.C.》で聞かせるランニングベース、6曲目のバラード《スピーチレス》での美しいトーンが聞きどころか。当時のウェザー・リポートのアルバム製作は、リハーサルと本番の境界もなく録音されたテープから編集されたといわれる。シーケンサーによるリズムキープの上で各人がフリーなアプローチを試す。シンセサイザーと編集機材の発達は、そういったアルバム制作を可能としながらジャズの本質である即興から大きく変貌を遂げた。その状況下で出来上がったこのアルバムはウェザー・リポートにとっても大きな転換期を迎えたものとなった。《Speechress》のベース・プレイは《お前のしるし》を想起させ、《Volcano For Hire》の疾走感もたまらない。
Live & Unreleased
Weather Report (2002)
Disc-1
- Freezing Fire
- Plaza Real
- Fast City
- Portrait of Tracy
- Elegant People
- Cucumber Slumber
- Teen Town
- Man in The Green Shirt
Disc-2
- Black Market
- Where The Moon Goes
- River People
- Two Lines
- Cigano
- In A Silent Way / Waterfall
- Night Passage
- Point of Entry
- Rhumba Mama
- Directions
アルフォンソ・ジョンソン~ジャコ~ヴィクター・ベイリーが在籍した1975~1983年に、イギリス、アメリカの各地で収録された未発表ライブ音源18曲を収録した2枚組CD。おなじみのジャコの名曲もラインナップされ、本人の演奏も堪能できるが、ジャコとはまた一味違うグルーヴ感覚のアルフォンソのライブ・パフォーマンス、スタジオ録音とは比べ物にならない存在感を見せるショーターも聴き所。
『8:30』は、ジャコとアースキンが在籍した黄金時代の演奏だが、本作はザヴィヌルとショーターを除くメンバーの変遷とともに変化するサウンドを一度に楽しめる「WRベスト・ライブ集」といえる内容。Disk-2-#10は1975年の演奏だが、ザヴィヌルのソロの中に名曲バードランドのメロディラインの原型が既に現れているのが興味深い。私のオススメは<Disc-1>-#1. #3. #6. #8。 そして<Disc-2>-#1. #2. #4. #6. #7. #8. #9. #10など。
本作の音源となっている8年の間でザヴィヌルが繰り出すシンセサウンドも、その時代を反映して変化しており、この楽器の進化が、グーループの音楽性にも大きく関わっていることがうかがえる。
Forecast: Tomorrow
Weather Report (2006)
Disc-1
- In A Silent Way
- Super Nova
- Experience In E
- Milky Way
- Tears
- Eurydice (full version)
- Orange Lady
- Unknown Soldier
- Directions (take 1)
- Surucucu (live in Tokyo)
- Second Sunday In August
- 125th Street Congress
Disc-2
- Nubian Sundance
- Blackthorn Rose
- Badia
- Cannon Ball
- Black Market
- Three Clowns
- Havona
- Birdland
- Palladium
- The Pursuit Of The Woman With the Feathered Hat
- The Orphan
- Sightseeing
Disc-3
- Dream Clock
- Three Views Of A Secret
- Port Of Entry
- Dara Factor Two
- Procession
- Plaza Real
- The Well
- D-Flat Waltz
- Domino Theory
- Predator
- Face On the Barroom Floor
- Indiscretions
- 125th Street Progress (DJ Logic Remix)
DVD
(Live at the Stadthalle, Offenbach, Germany, September 28, 1978)
- Black Market
- Scarlet Woman
- Young And Fine
- Pursuit Of The Woman With The Feathered Hat
- A Remark You Made
- River People
- Thanks For The Memories/Delores
- Portrait Of Tracy/Third Stone From The Sun
- Mr. Gone
- In A Silent Way
- Waterfall
- Teen Town
- I Got It Bad And That Ain't Good/The Midnight Sun Will Never Set On You
- Birdland
- Introductions
- Fred & Jack
- Elegant People
- Badia
結成から35年。解散から20年にあたる2006年、ウェザー・リポートのベスト盤ボックスセットが発売された。オリジナルアルバムから選曲された34曲に未発表ロングバージョンのDisc1-#9《Directions》と、未発音源のライブバージョンのDisc2-#1《Nubian Sundance》(←コレ超オススメです)、そしてDJ LogicによるリミックスエディションのDisc3-#13《125th Street Progress》の3曲を追加したCD3枚組。
さらに、ジャコが在籍時の1978年にドイツで行われたライブを収録したDVDが付いたお得なセットである。このDVDはその昔『Young And Fine Live!』として出回ったブートレグで、チャプタに不具合があったりしたが、ここにバンドルされたDVDでは不具合は改修されている。
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ライナーの代わりに100ページ超のブックレットが付属。ただ、パーソネル・クレジットには誤記があったりするので、ちょっとがっかりする部分もあるんだけど、なかなかよくまとめられている(国内盤には対訳版も付く)。
このボックスセットには、WR設立メンバーが出会う契機となった作品からも一曲ずつセレクトされている。ショーター、ザヴィヌルが共演したマイルスのDisk1-#1《In A Silent Way》、ショーター、ヴィトウスが共演したDisk1-#2《Super Nova》がそれにあたる。Disk1-#3《Experience In E》は、ザヴィヌルがブラック・ミュージックのフィーリングを吸収していく過程で多くの経験を積んだキャノンボール・アダレイ・グループでの仕事を記録したものだ。
3枚のCDは時系列で編集されており、マイルスの許を離れてWRを旗揚げ、前衛的な演奏からブラック・フィーリングを取り入れサウンドの指向性に転機が訪れるまでを収めたDisk1。ベーシストがヴィトウスからアルフォンソに替わってブラック・ミュージックの要素を増し、ジャコの加入で活動がピークを迎えたDisk2。テクノロジーの進化とともに、サウンドにザヴィヌル色がが強く反映し、グループの最終章を迎えるまでを記録したDisk3の三部構成となっている。
彼らが駆け抜けた時代は、ジャズが進化を遂げた最後の時代であり、その断片を映し出していたのがウェザー・リポートだと思う。 個人的に彼らの足跡を網羅したアルバムの中で、もっとも評価されるべきベスト盤は『Live & Unreleased』だったと思うが、結成時から解散までのオリジナルアルバムから、まんべんなく選曲されたベスト盤というものはこれまで一度も制作されていない。だからWRを聴いたことがないビギナーから、ジャコのライブ映像DVD目当ての人にもウレシイ作品なのである。
The German Concerts
Berlin 1975, Offenbach 1978, Cologne 1983
Weather Report (2011)
<Berlin 1975>
CD1
- Freezing Fire 8:21
- Scarlet Woman 8:43
- Mysterious Traveller 4:48
- Badia / Boogie Woogie Waltz 19:44
<Offenbach 1978>
CD2
- Black Market 11:13
- Scarlet Woman 9:24
- Young And Fine 6:46
- The Pursuit Of The Woman With The Feathered Hat 6:49
- A Remark You Made 7:04
- River People 7:52
- Thanks For The Memories / Dolores 3:47
- Portrait Of Tracy / Third Stone From The Sun 9:46
- Mr. Gone 8:32
CD3
- In A Silent Way 2:20
- Waterfall 1:50
- Teen Town 8:08
- I Got It Bad And That Ain’t Good / The Midnight Sun Will Never Set On You 8:50
- Birdland 6:49
- Introductions 1:47
- Fred & Jack 6:16
- Elegant People 8:09
- Badia 13:29
<Cologne 1983>
CD4
- Procession 9:59
- Fast City 9:10
- The Peasant 9:48
- D Flat Waltz 12:45
- Blue Sound Note 3 9:00
- Duet Jose Rossy & Omar Hakim 2:58
- Two Lines 12:19
- Plaza Real 7:09
CD5
- Medley 12:55
Black Market
Elegant People
Badia / Boogie Woogie Waltz
A Remark You Made
Birdland - The Duet 7:54
- Where The Moon Goes 12:21
Special DVD
- Mysterious Traveller 4.48 (Berlin 1975)
- Teen Town 8:08 (Offenbach 1978)
- The Peasant 9:48 (Cologne 1983)
2011年はウェザー・リポート結成40周年。これを記念したWRの秘蔵音源が2010年から輸入盤を中心に相次いでリリースされている。アルフォンソ・ジョンソン(b)、チェスター・トンプソン(ds)、アレックス・アクーニャ(per)が在籍した1975年のベルリン公演を収録した『Live in Berlin 1975(1cd)』。ジャコ、ピーター・アースキン(ds)の2人が活躍した1978年のオッフェンバッハ公演を収録した『Live in Offenbach 1978(2cd)』。ジャコ、ピーターの強力リズムセクションが抜けた穴を埋めるに余りある活躍を見せたヴィクター・ベイリー(b)、オマー・ハキム(ds)、ホセ・ロッシー(per)の加入が功を奏した1983年のケルンのステージを収録した『Live in Colgne 1983(2cd)』。これら単体パッケージを一まとめしたのが本作である。しかも本作には各ステージから1曲ずつの映像を収めたスペシャルDVDも付属する。WRの中でも好きな時代がハッキリしている向きには単発がいだろうが、WRの活動を俯瞰的に観察したいリスナーには単発で揃えるより断然お買い得だ。本作とほぼ同じ趣向で制作され、演奏曲もダブる2枚組『Live & Unreleased』との聴き比べも面白いだろう。なお本作と同じ演奏の映像作品も発売されている。一つお断りを書くとするなら、1978年のオッフェンバッハ公演はこれまで2つの映像作品(『Young And Fine Live!』と『Forcast: Tomorrow』)として発売されているものと同じステージであることを了解いただきたい。